新しい部屋の片付けがひと段落して、ふと気づく。この街には、休みの日に「ちょっとお茶でも」と声をかけられる人が一人もいない。
就職、転職、転勤、結婚。引っ越しのきっかけはいろいろですが、知り合いのいない土地での暮らしは、思っていたより静かに感じるものです。平日は新しい職場や生活になじむので手いっぱい。週末になると急に時間があいて、なんとなくスマホを見ているうちに一日が終わってしまう。そんな経験がある人も多いと思います。
この記事は、引っ越しや転勤で新しい街に来たばかりの人に向けて書きました。知らない土地で友達ができにくい理由と、引っ越してすぐにできること、趣味をきっかけに仲間を見つける方法、それから転勤族ならではのつきあい方まで、順番にお話しします。
引っ越しで友達がいなくなるのは、めずらしいことじゃない
まず知っておいてほしいのは、引っ越しをして「知り合いゼロ」から始める人は、毎年とても多いということです。
総務省の「住民基本台帳人口移動報告」によると、2025年の1年間に市区町村をまたいで引っ越した人は519万548人いました。そのうち、都道府県をまたいで引っ越した人は251万5731人です。年代別にみると、都道府県をまたいで引っ越した人がいちばん多いのは20〜24歳で、25〜29歳、30〜34歳と続きます。就職や転職、転勤が重なりやすい年代ですね。
つまり、あなたが今いる街にも、同じように「引っ越してきたばかりで、まだ知り合いがいない」という人がきっといます。声に出さないだけで、休日の過ごし方に迷っている人は意外と近くにいるものです。
知らない土地で友達ができにくい3つの理由
引っ越し後に友達ができにくいのは、あなたの人づきあいの力が落ちたからではありません。新しい土地ならではの理由があります。
誰かが「つないでくれる」ことがない
地元や長く住んだ街では、友達の友達、同級生の知り合い、行きつけのお店の常連さんのように、誰かを通して人の輪が広がっていくことがよくあります。ところが引っ越したばかりだと、この「つないでくれる人」がいません。紹介で知り合うという、いちばん気楽なルートが使えないんです。
街のことがまだよくわからない
どこにどんなお店があるのか、休日に人が集まるのはどのあたりか、電車やバスでどこまで出かけやすいのか。土地勘がないうちは、出かける場所を考えるだけでもひと苦労です。人と知り合う以前に、そもそも行き先が思いつかない、という状態になりやすくなります。
新しい環境になじむだけで疲れてしまう
新しい職場、新しい通勤ルート、新しい生活。引っ越し直後は、本人が思っている以上に気をはっている時期です。週末になっても「人と会いに行こう」という元気が残っていないのは、ごく自然なことです。
最初の1〜2か月は、生活を整えるだけで十分。友達作りは、少し落ち着いてからでも遅くありません。
「気軽に話せる相手」がいるかどうかは、思った以上に大きい
内閣府が2025年12月に行った「孤独・孤立の実態把握に関する全国調査」では、孤独を感じることが「しばしばある・常にある」と答えた人の割合を、いろいろな条件ごとに比べています。
そのなかで、「気軽に話せる相手」がいる人ではこの割合が2.5%だったのに対し、いない人では25.0%でした。調査は因果関係までを示すものではありませんが、ちょっとした雑談ができる相手がいるかどうかで、気持ちの面に大きな差が出ていることがうかがえます。
ここで大事なのは、「親友」ではなく「気軽に話せる相手」だということです。引っ越し後の友達作りは、いきなり深い関係をめざさなくて大丈夫。週末に顔を合わせて「最近どうですか」と言い合える人が一人できるだけで、新しい街での暮らしはずいぶん変わってきます。
引っ越してすぐにできる、友達作りの下準備
いきなり人の集まりに飛び込むのは、ハードルが高いですよね。まずは、街と少しずつ仲良くなるところから始めてみてください。
休日に、家のまわりをあてもなく歩いてみる
地図アプリで目的地を決めずに、家から歩いて20〜30分くらいの範囲をぶらぶらしてみる。それだけで、気になるカフェ、図書館、公園、体育館、掲示板にイベントのポスターが貼ってある場所など、いろいろなものが目に入ってきます。
街のことがわかってくると、「この辺りで集まりがあるなら行けそう」という感覚がつかめます。友達作りの場所を選ぶときにも、この感覚がけっこう役に立ちます。
「いつものお店」をひとつ作る
パン屋さん、喫茶店、定食屋さん、本屋さん。同じお店に何度か通っていると、店員さんと短い言葉をかわすくらいの関係ができてきます。友達とまではいかなくても、知っている顔がある場所がひとつあるだけで、街に少しずつ自分の居場所ができていく感じがするものです。
「引っ越してきたばかり」を会話のきっかけにする
新しい土地では、「最近こっちに越してきたんです」という一言が、そのまま会話の入り口になります。「おすすめのお店ってありますか」「この辺で休日によく行く場所ってどこですか」と聞くと、相手も答えやすく、話が自然に広がります。
地元の人にとっては、自分の街のことを聞かれるのはわりとうれしいものです。知らないことが多いのは、引っ越してきた人だけが使える会話のネタだと思ってみてください。
知らない土地で友達を作る方法は「趣味」を入り口にするのが近道
街に少し慣れてきたら、いよいよ人と知り合う場に出かけてみる番です。知り合いがいない土地では、「共通の話題があらかじめある場」を選ぶと、ぐっと気がラクになります。そこでおすすめなのが、趣味を入り口にする方法です。
前の街でやっていた趣味を、新しい街でも続ける
前に住んでいた場所で、フットサルや読書会、ボードゲーム、ランニングなどの集まりに参加していたなら、新しい街でも同じジャンルの集まりを探してみてください。
勝手がわかっている趣味なら、初めての場所でも「何をすればいいか」で迷いません。「前の街でもやっていたんです」という話は、そのまま自己紹介になります。趣味は、引っ越しても持っていける数少ないもののひとつです。
「この街を知ること」そのものを趣味にしてみる
前の街での趣味がとくにない人は、新しい土地を楽しむことそのものを趣味にしてしまうのもおすすめです。
街歩き、食べ歩き、地元の山や川沿いを歩くハイキング、歴史のある場所をめぐる散策、写真を撮りながらの散歩。こうした集まりには、地元にくわしい人も、同じように最近引っ越してきた人も参加していることがあります。くわしい人には案内してもらえて、引っ越してきた人とは「どこから来たんですか」で話が弾む。新しい街に来た人には、ちょうどいい組み合わせです。
趣味そのものがなかなか見つからない人は、趣味がない人の趣味の見つけ方の記事も参考にしてみてください。
住んでいるエリアの集まりを探す
ネットで集まりを探すときは、ジャンルだけでなく「エリア」で絞り込むのがコツです。引っ越したばかりだと、遠くの集まりは帰り道の不安も大きく、だんだん足が向かなくなってしまいます。家から通いやすい範囲の集まりを選ぶと、続けやすさがまったく違います。
自治体の講座や地域の行事も、近所の人と知り合えるきっかけになります。このあたりは40代・50代からの友達作りの記事でくわしく紹介しているので、気になる人はあわせて読んでみてください。
サークルやイベントの探し方をもっと広く知りたい人には、趣味友達の見つけ方の記事もあります。
「単発のイベント」と「続くサークル」を使い分ける
知らない土地では、最初から特定のサークルに入るより、単発のイベントにいくつか参加して、街の雰囲気や集まる人の感じをつかんでおくのがおすすめです。
何回か行くうちに、「この集まりは居心地がいいな」と感じるところが見つかったら、そこに続けて通ってみる。顔なじみができてくるのは、たいてい2回目、3回目あたりからです。サークルを選ぶときに見ておきたいポイントは、社会人サークルの選び方の記事にまとめています。
転勤族の友達作りは「期間限定」を前向きにとらえる
転勤が多い仕事だと、「どうせ数年で離れるから」と、友達作りに力が入らないこともあると思います。せっかく仲良くなっても、また別れることになるなら最初から…という気持ちも、よくわかります。
でも、期間が決まっているからこそ楽しめるつきあい方もあります。
「この街にいる間に楽しみたいこと」を決めておく
「ここにいる間に、地元の山にいくつか登ってみたい」「この地域の名物をひと通り食べてみたい」。そんなふうに、この街ならではの目標をひとつ持っておくと、同じことを楽しんでいる人とつながるきっかけになります。目標があると、集まりに参加する理由もはっきりするので、一歩が出やすくなります。
離れたあとも、つながりは続けられる
引っ越したら関係が終わる、というわけではありません。趣味でつながった友達とは、次の街に移ったあとも連絡を取り合ったり、「遊びに来たときは案内するね」と再会したりできます。住んでいた街ごとに友達がいるというのは、転勤族ならではのちょっとした財産です。
「深くなりすぎない、でも会えばうれしい」くらいの関係も、立派な友達です。期間限定だからと遠慮せず、その街での時間を楽しんでください。
土地勘がない時期に気をつけたいこと
新しい街での集まりは楽しいものですが、土地勘がない時期ならではの注意点もあります。
ひとつめは、帰り道を事前に調べておくことです。夜の集まりに参加するなら、最寄り駅からの帰り方や終電の時間を先に確認しておきましょう。盛り上がっているときに「帰り方がわからない」と気づくと、なかなか言い出せないまま遅くなってしまうことがあります。
ふたつめは、住んでいる場所をくわしく話しすぎないことです。「最近引っ越してきた」「一人暮らし」「このあたりに住んでいる」といった情報が重なると、思った以上に生活のことが伝わってしまいます。仲良くなるまでは、「〇〇市のほうです」くらいのざっくりした言い方で十分です。
みっつめは、知り合いが少ない時期につけこもうとする人がいる、と頭の片隅に置いておくことです。親切にされるのはうれしいものですが、仲良くなったあとで勧誘をされるケースもあります。見分け方は社会人の友達の作り方の記事にまとめているので、一度目を通しておくと安心です。
引っ越し後の友達作りでよくある悩み
地元の人たちの輪に入れる気がしない
地元出身の人同士がすでに仲良くしている集まりだと、入りにくく感じることもありますよね。
そんなときは、地元の人が多い集まりにこだわらず、いろいろな地域から人が集まっていそうなジャンルを選ぶのもひとつの手です。また、「引っ越してきたばかりなので、いろいろ教えてください」と最初に言ってしまうと、まわりも接し方がわかって、気にかけてくれやすくなります。
方言や地元の話題についていけない
これは、むしろ会話のきっかけにしてしまっていい部分です。「今の言い方、初めて聞きました」「それってどういう意味ですか」と素直に聞くと、たいてい楽しく教えてもらえます。わからないことを無理にわかったふりをするより、ずっと打ち解けやすくなります。
一人暮らしで、休日がとにかく長く感じる
知り合いがいない街での一人暮らしは、休日の時間がぽっかりあきやすいものです。毎週のように集まりに行く必要はありませんが、「月に1回は何かの集まりに顔を出す」くらいのゆるい目安を決めておくと、予定が少しずつ埋まっていきます。
集まりに行かない日も、図書館やカフェなど、人の気配がある場所で過ごしてみるだけで、気分はけっこう変わります。
結局、どこにも参加できないまま時間がたってしまった
引っ越してから半年、1年とたって、「今さら」と感じている人もいるかもしれません。でも、集まりに参加するのに、引っ越してからの期間は関係ありません。「こっちに来て1年くらいになるんですけど、こういう集まりは初めてで」で、まったく問題ありません。始めたいと思った日が、いちばんいいタイミングです。
まとめ
引っ越しや転勤のあとに友達がいないと感じるのは、あなたのせいではなく、つないでくれる人も土地勘もない「スタート地点」にいるだけです。毎年たくさんの人が、同じように新しい街で一から人間関係を作っています。
まずは街を歩いて、いつものお店を見つけて、少しずつ土地になじむ。それから、前の街でやっていた趣味や、この街ならではの楽しみを入り口に、近くの集まりに顔を出してみる。親友を作ろうと気負わなくて大丈夫です。気軽に話せる人が一人できれば、新しい街はぐっと居心地のいい場所になります。
トモサーでは、エリアから探すページで、住んでいる地域のイベントやサークルを見つけられます。気になる集まりはブックマークしておけますし、参加した人のレビューで雰囲気を確かめることもできます。基本の機能は無料で使えるので、新しい街でどんな集まりがあるのか、よかったらのぞいてみてください。




